飛行機の使い方
自分から見た飛行機の使い方の例を紹介します
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航空トピック
【トピック 2018.5.18 】 キューバのボーイング737墜落事故 39年前の機体、心配な会社などの要因が重なり、起きるべくして起きてしまった事故 【概要】
2018年5月18日、キューバのクバーナ航空972便が、ハバナ国際空港を離陸直後に、6マイル先の農地に墜落しました。乗客の3名が救出され病院に搬送されましたが、100名以上の死亡者が出ている、とのこと。「電線に接触した」との話も出ているそうです。
【墜落した便について】
972便はハバナ国際空港(ホセ・マルティ国際空港 José Martí International Airport (HAV/MUHA)を出て、国内のハバナから670kmほど離れたオルギンHolguín のフランク・パイス空港 Frank País Airport ( HOG/ MUHG)に向かっていたとみられます。共産党の機関紙「グランマ」よると(と書かれたCNNによると)DMJ 0972便は、12時08分にサンティアゴ・デ・ラス・ベガス地区の農業地域に墜落した。エドゥアルド・ロドリゲス・ダビラEduardo Rodríguez Dávila交通副大臣は「1人の乳児を含む105人の乗客が搭乗している。5人の乗客が外国人で、100人がキューバ人だった」と述べた。アルゼンチン外務省は「2人の乗客がアルゼンチン人である」と述べました。またメキシコの民間航空局によれば、乗組員5人がメキシコ人だったとのことです。
【運行会社について】
国営クバーナ航空は、(旧西側諸国の)欧米による経済制裁のため、西側諸国の航空機を購入できません。ロシア機は購入できるのですが、そもそも経済活動が停滞しているため資金もなく、仕方なくものすごく旧型の旧ソ連機を使っています。しかし、それも限界なので、路線によっては、外国の航空会社に全てをリースし、その場を凌いでいます。今回もそうでした。運営会社はクバーナですが、実際に運行していたのはグローバルエアGlobal Air (Damojh Aerolíneas)(DMJ)でした。この会社はメキシコのメキシコシティに本社がある会社で創業は1990年。チャーターやリース専門の会社です。2011年の所有機はB737-200型を7機、B737-300型を2機、G-519ガルフストーム1機の計10機だったらしいのですが、別の資料によると、2012年の所有機はボーイング737-200型(XA-UHZとXA-UMQ)、ボーイング737-500(XA-UHZ)と書かれた情報もありました。しかし現実として、今運用していたのは事故機のみだったのでは?と書かれた情報もありました。
【機体について】
今回の機体はボーイング737-200型です。正確に書くと Boeing 737-201Adv(アドバンス) (XA-UHZ)。 製造は1979年9月 この会社で登録されたのが200810月。前の登録番号はXA-MAK。エンジンはPW JT8D-9A。最大離陸重量は53070kg 座席配置はエコノミー120席・・です。
日本の報道、日本のニュースサイトでは「ボーイング737型機が墜落した」と言っていますが(それも事実ですが)、現在日本の空を飛んでいる737とは全く別と言えるほど別物です。例えると「トヨタ・カローラが事故を起こしました」と言われても、「2018年の現行カローラではなく、実は1966年の初代カローラだった」としたら事故のニュアンスが全く異なるのと一緒です。世代交代がそれほど早くない航空業界でも「この世代(-100型、-200型)」の、「次の世代の(-300型、-400型、-500型、-600型)」の、「次の世代(-700型、-800型、-900型)」が最盛期を迎えていますが、既にさらに「次の世代(-MAX7、-MAX8、-MAX9、-MAX10)」が初飛行を終え量産準備中を始めている・・・という状態で、「通常商業運行として飛んでいるのが奇跡と言えるほど。古すぎて貨物機に改造して使う会社も出てきません。当然ながら日本の空では古すぎて絶対に見ることができません。古い機体がそれなりにある南米の空港にいっても、さすがにこの機体を見かけることはかなり稀であり、空港の隅で廃棄寸前に朽ち落ちていたり、エンジンを取り外して廃棄状態になっていることがほとんどです。メキシコを何度も訪れている自分ですが、今から20年前、10年前ならば確かにメキシコシティ空港は世界の中でもB737-200型が比較的多くみられる空港でした。しかし、数年前に行ったときにはその姿もほとんどなく格納庫周辺に半分廃棄されているものを少し見た程度でした。
【私的な見解】
自分は2013年ごろキューバを訪れてみました。「スポーツと政治は別」と良く言いますが、残念ながら「航空業界と政治」はかなり近く、時の政権と経済状況に大きく作用されてしまうのが飛行機を取り巻く世界です。キューバはアメリカ社会と決別したあのキューバ危機以来、ずっと経済制裁下におかれました。その結果国のあり方は大きく変わってしまいました。
実際のキューバは太陽がまぶしく輝き、豊かな緑と青い海に囲まれた非常に温暖な土地を持つ国です。しかし、国内の生活は未だに「旧ソ連政権下の貧しい国家の姿」そのものでした。首都ハバナにおいてもデパートには商品が極めて少なく、空のガラスケースばかりが並ぶデパートもありましたし、売っているものも、非常に貧弱なものばかり。食料品ですら野菜や果物は質が悪い上に安くなく、経済活動や食糧生産において、生産、流通、小売りなど、様々な段階で大きな問題を抱えていることを感じました。
航空業界はもっと大変で、首都の空港には博物館クラスの旧型、旧ソ連機がポツポツと停まっているだけ。飛行機なんてものは、古くてもきちんと部品交換をし、コストをかけた大規模改修をすればいつまでも飛べるのですが、その部品がきちんと供給されるか不安な機種しかありませんでした。そんなキューバですが、外国人観光客は欲しいので、外国人が来る大きなルート、ハバナ-カンクン間は、キューバ国営クバーナ航空の名称で、リトアニアのリース会社(アビオンエクスプレス航空)のウエットリース機(機体のみならず乗員などを全てまとめてリースをすること)のA320を使っていました。
今回の件、普通に考えて、今時B737-200型を1機しか持っていないGlobal Air は、どう考えても危険な会社であり、危険な機体です。普通ならばそれを定期運航路線にしようとは絶対に思わないはずですが、そこはキューバ。多分非常に安価な金額でGlobal Air とリース運行契約を交わしたんだと想像します。公共交通機関も非常に貧弱な国ですので、そんな国内線でも使わなくてはならない人が多かったのでしょう。
・・・そんな様々な要因が作用して、こんな悲惨な事故が起こってしまいました。「電線に接触して・・・」との目撃情報もありますが、離陸していく航空機の高度は、電線のある高さなどは数秒で通過してしまいます。そもそも論として、ハバナ近郊のあの位置にそれほど高い電線があったとは思えません。自分も車でいろいろ走りまわりましたが、ホセマルティ空港周辺は、幹線道路の近くに一部住宅街はありますが、基本的に緑地であり農地です。勝手に予想させていただくと問題は「電線に接触する高度までなぜ落ちてしまったのか?」または「なぜ高度があがらなかったのか?」ではないかな、と思います。
・・・とにかく、条件的にある程度予想されてしまってはいたとしても、やはりこんな事故は起こってはいけないし、防ぐ努力をしていかなくてはならないと強く思います。(2018.5.19)
【航空トピック 2018.5.10】 北朝鮮 金正恩氏の専用機は 33年、または30年前の製造機 金正恩国家主席とトランプ大統領の会見のため、金正恩氏の特別機が着目されています。その機体は旧ソビエト連邦のイリューシン設計局(Ilyushin Aviation Complex / Авиационный комплекс имени С. В. Ильюшина )が製造したイリューシン IL-62 (Ilyushin IL-62. Ил-62)。
名目上、北朝鮮の航空会社 高麗航空 Air Koryo(JS/KOR) は4機のIL-62M(P-618(製造番号2546824 製造1985年 推定198席 最大離陸重量167000kg)、P-881(製造番号3647853 製造1986年6月 推定169席 最大離陸重量167000kg)、P-882(製造番号2850236 製造1988年1月 推定198席 最大離陸重量167000kg)、P-885(製造番号3933913 製造1979年6月 推定169席 最大離陸重量167000kg)を所有しています(by JP airlinefleets 2012)。
高麗航空 Air Koryo自体が空軍の管轄下にあり、資料が少ないのですが、主に平壌と北京を結ぶ国際線で使用されていますが、4機のうち2機は政府専用機で、製造番号「2546624/46-02」の P-618(またはP-883)、「2850236/50-03」の P-882 が使用されているようです。(このサイトには一般旅客用にしているP-881を掲載しています) ちなみに今回の首脳会談のような特別な運行の便名は「PRK??」になると予想されます。というのも2018年2月9日に平昌オリンピックにあわせ韓国に派遣した高位級代表団機は「PRK615」便という名称だったからです。PRKは朝鮮民主主義人民共和国 Democratic People's Republic of Korea の略、615は2000年に行われた第1回南北首脳会談が開かれた6月15日にちなんでいるらしい・・・とのことです。(2018.5.10) ※なにか航空機に関する話題がニュースになると、食い入るように読み漁ってしまう自分ですが、以前より「これを書いている記者さん、なんにも知らないんだなぁ」とか「この書き方では事実が間違って伝わってしまうな」という記事を多く読んできました。自分ごときが・・とも思うのですが、航空機・飛行機業界の話の中で、日本語ではだれも書いていない事実が多すぎるので、自分が書ける範囲で事実の要点を書いていこうかな、と思い、このコーナーを始めました。